FC2ブログ

ネット恋愛 コグリア国物語 第16話【メッセージ イン ザ ボトル】

じゅぴたー6

《文:シナモン》



 コグレーンは、自らがラクテーン地方に建国したコグリア国に心地よさを感じていた。いたずらに領土の拡大を考えることはなかったが、交易は徐々に活発になり、隣国との関係もスムーズにいっていた。コッカラーノとのメールの交流はこの頃はまだ、ボチボチという感じだった。

 コグレーンは自分の王国を規律正しく維持するのに心を砕くほか、毎日のように隣国に出向き、親睦を深めた。リアルワールドでは外交下手と評価されることも少なくなかったが、コグリア国でのコグレーンは必要十分な程度に雄弁だった。
 日々数多くの言霊に接する中で、コッカラーノの言霊には、他の同盟国の盟主にはない独特の輝きをあるとコグレーンは感じていた。いつしか王は、彼女からの言霊を待ちわびるようになった。紫陽花の花のように目まぐるしく印象が変わる彼女の言霊は、そんなに頻繁にはコグリア国には届かなかったが…。
 ある晴れた朝。コグレーンが画像倉庫の棚卸しに精を出していると、湖に美しいガラスのボトルが流れ着いているのを見つけた。手に取ると中に文がしたためてあった。

 差出人は《コッカラーノ》とあった。
 「ジョセフ卿から不当に言い寄られて閉口しています。しばらく留守にします」



 その名を目にした時、コグレーンは憤懣やるかたない思いに捉われた。 ジョセフとは、コグレーンが彼の地ラクテーンで建国を果たした初期に友好の使者を送ってきた自称《吟遊詩人》だった。昼はキャリアカウンセラーとして若者たちの声に耳を傾ける賢者を演じる一方、夜はエロティックな物語を紡いでいた。

 ジョセフの語りはコグレーンには退屈な代物だったが、建国してすぐの使者だったこともあり、コグレーンは折りに触れ、ジョセフの語りに付き合った。しかし、ジョセフからの訪問は日を重ねるにつれ少なくなり、最近では同盟の証でもある《リンク》も破棄されていた。
 しかし、コグレーンが不審に思ったのは、彼が同盟国を訪問する度に、ジョセフの言霊を頻繁に見かけることだ。その足跡の付き方にどこか不自然さを感じたいたコグレーンであったが、コッカラーノの文ですべての疑問が氷解した。
「こいつ…関西方面の女性限定でコメントしてるやんけ!!」
 コグリア国に接近を図ったのは、この国を訪れる女性狙いであったのか…。
 捨ててはおけまい。コグレーンは急ぎ、コッカラーノへの文をしたため始めた。


つづく
第17話へ



お忙しいところ恐れ入ります。
←あなたの1クリックが励みになります。
いつも、すいませんm(_ _ )m

ネット恋愛 コグリア国物語〔白い花の王宮と魔女〕  第15話【アホですか?】

じゅぴたー3
《文:シナモン》

  やっちまった……オレ…やっちまった。
 見知らぬ女性とメルアドを交換するということは、実はコグレーンにとって極めて珍しいことだった。年甲斐もなく、中学生の頃に返ったようにドキドキしたりもした。
 実は……この時期にもう一人、ケータイのメルアドを交換した女性がいたのだが、その彼女とコッカラーノとでは意味合いがまったく違っていた。そのエピソードについては機会があれば述べることにするとして、話を前に進めていくことにしよう。
 しかし、この時点では、コグレーンはコッカラーノとリアルで出会うことになるとは夢にも思っていなかった。
 ある時、コグレーンがコッカラーノの小屋を訪れると、いつもと様子が違っていた。どこか華やいだ雰囲気に満ちていた。その理由は、日記を読んでわかった。

 ステキなタイミングが
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

 コグレーンがメルアド交換でウキウキしているうちに、コッカラーノの方では新しい恋の予感に胸をトキメかせていた。
 すなおに祝福したい気持ちと寂しい気持ちが同時に襲ってきて、一度はコメントを残さずに自分の領土に帰ったコグレーンであった。しかし、それではあまりに大人気がない。気を取り直して再びコッカラーノの部屋に向かった。

(*/∇\*) キャ(*/∇\*) キャ(*/∇\*) キャ(*/∇\*) キャ(*/∇\*) キャ(*/∇\*) キャ

  彼女はいつになくはしゃいだ様子に一瞬だけ我に返ったらしく、独り語りに「アホですか?」と述べた。
  コグレーンは「う~ん…アホ…と問われればそう……かも。でも、良かったね」と答えた。そうして自分の領土に戻り、これまで以上に甘いあま~い言霊作りに精を出し始めた。
 しかし、やがてコグレーンとコッカラーノは彼女の彼氏のことがきっかけで、逆に距離を縮めていくことになるのだった。


つづく
第16話へ

*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆'

お忙しいところ恐れ入ります。
もし万一、この作品で楽しめましたら1クリックを!m(u_u)m

ネット恋愛 コグリア国物語〔白い花の王宮と魔女〕  第14話【待っている。】

《文:シナモン》

じゅぴたー7

  コグレーンにとってコッカラーノは謎の多い女性だった。
 彼女の語り部小屋は不定期に営業され、訪問しても不在なことも多かった。そういう時は、ラクテーン地方以外に巡業に出ていることを後で知った。 コグレーンの《ホスピス花日記》は週に一度のペースで更新された。たまにコッカラーノから届くコメントは、他の同盟国から寄せられるものとは異質であったが、それだけに考えさせられる言葉が多かった。コッカラーノのコメントに対する返信にはある程度の時間が必要だった。

 ある日のこと。コグレーンが花日記を更新していると、珍しくコッカラーノがコグリア国で話しかけてきた。
「連絡が取れない友達がいるんです」 いま振り返ると、日記に関するコメントにしてはややピントがずれているとも思えたが、これに対してコグレーンはごく当たり前の返答をした。
「文を託せばよいのでは。あなたなら相手の心に届く言葉が紡げるでしょう」
「それは試みてみました。それでも返事がないのです」
「では……もう少し待たなくてはならないかも知れませんね。時が満ちれば必ず願いは届くと思います」

 しばらく沈黙が流れた。これで話は終わったと思われた。
 が、コッカラーノからの言葉は続いた。
「やはり…待たなくてはならないのでしょうか。仕方ありませんね。でも……わたしはこれまでもずっと誰かを待ち続けてきました」
「…………」
「前の彼が病に倒れた時も、わたしにできるのは待つことだけでした。わたしの方から連絡を取ることはできませんでした。そして彼は戻ってこなかった」
 思わぬ告白だった。コグレーンは返事に詰まった。まず考えたのは、これ以上の会話はコメント欄という社交の場ではすべきではないということだった。
 迷いながらもコグレーンは返事を書き始めた。
「話の流れから、辛い思い出を語らせることになって申し訳ありませんでした。この場でこれ以上語り合うのはやめにしましょう」
 そして、パソコンのメールアドレスを彼女に伝えた。
 ブログでも、リアルでもない語りの場が二人の間に生まれた瞬間だった。

つづく
第15話へ

*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆'

お忙しいところ恐れ入ります。
もし万一、この作品で楽しめましたら1クリックを!m(u_u)m
プロフィール

桃

Author:桃
文学と映画の好きな主婦。
神戸に住んでいます。

最新記事
カテゴリ
最新コメント
過去のログ v.コンパクト
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR