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裏リアルバーチャルストーリー 第2話【ずるい男テロル】その8

 匿名性という名の心地よいベールに包まれているネット社会だが、
そこに災難を求めてやって来るような人間はいない。
誰しも皆、利便性や癒し、共感、萌え~、助け合いなど、プラスな働きを求めてアクセスしてくることだろう。
けれど匿名性に守られたネットコミュニケーションとは、そうそう甘いものではないのだ。
けっして大袈裟に言っているわけではなく、
ちょっと考えればわかる事だが、ネットでも初めから『人に「感じ悪い人!」と思われても構わない』
と考えている人は稀で、誰しも皆、自分が接点を持つ人には好印象を持ってもらえるように努力しようとするものである。
しかしネットの上では誰しも皆、最終的には匿名性によって守られているので、
いつどんな切欠で天使のような優しい顔の書かれたカードが、エゴイストで冷酷な悪魔の顔に裏返るか?

・・・あるいは本当に裏表のない正真正銘、天使のような心の持ち主であるか?
それを予測するのは、なかなか難しいものである。
迂闊な人や運の悪い人は、天使だと思い広げていったネットの人間関係なのに、気が付いてみれば
パタパタパタっと、すべての天使カードが悪魔カードに裏返っていって、気が付けば四面楚歌になっていたなどという事もあるだろう。

テロルの仕事、ネットパトロール隊は、そんな窮地に落ちてしまった人の救済を任務としていた。

ネットの上にはよく「やられたらやり返せ!目には目を歯には歯を!ファックユー!凸」という論調の人がいるが、
そういった方法では、ネット上の争い事は泥沼化する事がほとんどである。
なんぼ匿名性によって自分の個人情報が守られているから大丈夫とは言え、スキルのない人間は、
知識を蓄えたハッカーには太刀打ち出来ない。
ハッカーを敵に回せば本名や住所などは簡単にネット上に晒されてしまうのだから、
スキルも無いのにネット上で横暴の限りを尽くしていたりすると痛い目にあう事もある。

ネットパトロール隊員の行う救済は、必殺仕事人のようにネットの悪人の息の根を止めるというような事は少なくて、
常に現時点でのネット界全域の治安状況を把握して、窮地に陥ってしまった人の良きアドバイザーになるという事であった。
そんなネットパトロール隊員を“なりわい”とするテロルが、出会い系でちょいと会った女の子ごときに、
災いを貰うような事があっては面目丸潰れなので、テロルは、外見にそぐわず遊び人であった(いや、調子こいてると言うべきか?)
桜子と、このまま一夜を過ごすのはパスするのが妥当だろうなと、冷静に、ほぼ心を決めていた。

食事が終わり、会計を済まし、駐車場へ向かおうとしているエレベータの中で
「今日は桜子ちゃんのお陰で楽しかったよ。どうもありがとう」と差し出したテロルの手を「こちらこそ」
と握った桜子の手は温かく「わたし・・・テロルさんさえ良かったら、このまま泊まってもいいですよ」
と見上げるような淫靡な目付きで言われたのでドキリとすると共に「据え膳食わぬは何とやら~」の諺が頭の中を
パレードのように右から左に通り過ぎて行く数秒間の間、思わず沈黙してしまった。

裏リアルバーチャルストーリー 第2話【ずるい男テロル】その7

出会い系を利用する人達が一番多く口にする
出会い系を利用する理由は「日常生活の中で異性との出会いが無いから」というものである。
確かに職種や居住区によっては言える事だろう。
だが・・・実際に出会い系の蓋を開けて覗いてみれば、利用者のほとんどは都心部に住む男女混合オフィスの勤め人や、
異性と、いくらでも接点のある職種である事が多い。

ハッキリ言ってしまえば、そういう人達にとっての出会い系の真の利便性とは、
往々にして日常での接点の無い異性との出会いという部分にあったりするものだ。
勤め人にとっての自分の仕事関係での異性間の不祥事は、時として墓穴を掘るものであるのは常識的によく知られた事だ。
それ故、浮気を求めているそういった職種の既婚者達が出会い系へと繰り出してゆく事は
非常に良くある事で、最初からそこには自分に都合のいいロマンスなり欲望なりを欲する気持ちがあるわけだ。

むろん独身同士ならば恋愛と不祥事は結びつかないので、
出会いに恵まれた職場環境である独身男女が、
それでも尚且つ出会い系を利用するとなれば「出会いが無いから」というのは言い訳に過ぎず、他に何らかの事情・理由があると考えるのが妥当だろう。

異性との交際は、真面目に行えば微笑ましい事となり、自分の勝手な都合で行えば自堕落な事となる。
相手の気持ちを尊重しつつ先行きの事も考えてという交際こそが本当の愛情に裏付けられた恋愛であり、
それ以外の恋愛はすべて遊び_と言い切ってしまうと、
不倫擁護派や男遊び、女遊び擁護派の人々に袋叩きにあうかもしれないが、
真に相手の事を大切に思う気持ちというのは、今そこに存在している相手の事だけを思いやるのではなく、
未来の相手の事もまた同じように変わらず大切に思う気持ちなんだろう。
「先の事なんて知らない。けれど今の自分はその人の事を愛している」もし、
そう本気で思っている人がいたとすれば、それは自分自身も相手も詭弁の煙に巻いているに過ぎない。

むろん出会い系利用者でなくても、そんな口先だけの人間はいるだろうし、
出会い系利用者であっても、一度出会い好きになった相手を真剣に愛し大切にする人がいないとは断言は出来ない。
ただ・・・自分自身が遭遇する事は難しいだろう。
なぜならば出会い系とは実社会での出会いと異なり、後後の責任を取らなくてもいいようなダーティな構造になっているから。
お見合いとは違い、相手の身元を証明してくれるものは何もない。
しかしまた自分の素性を明かしたくない人間にとってはそれは好都合なので相手の素性がハッキリしなくても、
お互い様という事になり、極端な話、職業や名前、年齢、住まいに関して嘘をかましあっていても、
成り立ってしまう。それが出会い系である。
むろんそういう意味では出会い系だけを槍玉に挙げるのは間違っており、ブログだってSNSだって、
ネット上のサービスである以上はすべてそうである。

そして、今回のテロルの、この桜子との出会いは、篠田から願われたものとは言えど、
そこはテロルも男の子だから、それなりの性的衝動というのはあるし、
別段、彼女を欲しがっていたわけでもないテロルにとっては
「ま、ちょっと遊べりゃラッキーかな?」くらいの軽いノリである。
とはいえテロルという男、それほど極悪非道という訳では無い。
ちょっとズルイところはあるかもしれないが、
極端に汚い遊び方はするつもりはなかったのだが・・・さてどうなることだろうか?

裏リアルバーチャルストーリー 第2話【ずるい男テロル】その6

 伊勢佐木町にある某シティホテルは都会の喧騒を離れて静かな立地条件の中にあった。
公園に面した清潔感のあるレストランで夕食を摂る事にした。

彩りの美しいコース料理が運ばれて来るたび桜子は、小さくはしゃいだ声を上げた。
食事がすすむうちに、話は、それとなく会う切欠となった出会いサイトの事となったが、
打ち解けるごとに桜子の口からは、彼女の印象からは程遠いような話がポロッポロッと零れた。
桜子は地味で、おとなしめな影の薄い女性なのに、あの出会い系を通じてずいぶん大勢の男に会ってきたのだという。

確かに車の中で聞いたインチキなニセジャニ系のおっさんに会った話などには、
彼女の簡単さを窺い知るに十分であったが、若い女の子特有の“顔がイイ男と思うやいなや興味を示す”という
軽はずみさ全開で、桜子は食事中に聞いただけでも10人以上の出会い系経由ご対面男の話をしてくれた。
桜子が軽はずみならば、相手の男も慎重派である筈もないのか・・・お互いにネットショッピングでもするごとくの
簡単な出会いの相棒達は、テロルが聞く限りでは桜子とよく似た思想体系の人達に思えた。

しかしテロル自身もこうして目の前のこの軽い女に簡単に、ご対面している。
『まぁ、何にしろ人間は経験だから・・・』内心、そういった考えに後押しされての事とは言えども。
それでも、とてもじゃないが、
実際に出会い系を試してみて、こうして相手と話してみた印象というのは、
『まさか・・・こういう軽さの子とマジ恋っていうのは絶対にナイなぁ~』というものだった。

「・・・でテロルさんは何人くらいの女の子に会ったんですか?」

「えっ?」心の中で、桜子の安全性について考えていたテロルは、質問の矛先が自分の方へ向いたので、
『ああ・・・そう言えば、俺はまだ、ほとんど何も桜子に自分の事を話していなかったな~』と気付き、
「僕は君と会うのが初めてだけど」と答えた。

このテロルの答えは嘘ではない。
テロルは実際のところ出会い系を利用しなければ彼女が作れないというほど出会いに不自由していたわけではない。
ただ、たまたま友人が出会い系を運営していて、その大学時代の友人である篠田と飲んだ時に、
色々と出会い系サイトの裏話を聞いて面白がっていたのだった。

「本気でサイトに入会してくれる女が少なくってさぁ~困ってるよ。ホント俺んとこもサクラの方が“マジ会員”の女性よりも
もちろん多いんだけども・・・っていうか8~9割がたサクラだっていうのがこの業界の常識なんだけどさ」と篠田は語った。

「そりゃあ、そうだろうなぁ。今更、出会い系って・・・あまりに使い古された出会いツールだもんね」
そう気軽に言いながらビールを旨そうに飲んでいたテロルに、篠田は「チェッ!」と舌打ちをすると、
「おまえぇ~友達のクセに、そういう事言うなよ~
俺だってわかってんだよ。ネットもブログとかSNSとか新手のコミュニケーションツールが色々と
出て来てるからな、出会い系も十年一日で同じ事やってたら生き残っていけんのだよ~」とぼやきが始まり・・・
で気が付けば、いつの間にか、サクラでもなくマジにサイトを利用してくれる一般の女子は貴重な存在だから、
そういう貴重な存在の女子に感謝の意味も込めて、たまにはコマシな男との出会いをプレゼントしたいんだ!!
とかわけのわからない論理の果てに、
いつの間にやら、そのコマシ(スケコマシではなく、ちょいとマシの意)
男の白羽の矢がテロルに立てられていたというような背景があっての事だった。
プロフィール

桃

Author:桃
文学と映画の好きな主婦。
神戸に住んでいます。

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