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ネット恋愛 コグリア国物語 第5話

《桃:文》


その当時、コッカラーノは自分の小屋で

ヘタクソなポエムを何点か発表した事がありました。

そのうちの一つで、このようなポエムがありました。


:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆
【オレンジジュース(炭酸)の生涯】



あたい オレンジジュース

お値段も 48円とお手頃



けれど あたい 無果汁なの

こんなのダメよ!とあからさまに

誹られた事もあったわ
絶望のあまり棚の最上階から飛び降りて

ボコボコになったわ

果汁入りに生まれたかったわ

例え10%でも

ジュースとしての誇りが欲しかったの

コンプレックスの固まりになって

拗ねていたあたい



だけど そんなあたいにも

やって来たのデビューの日が

養護施設のクリスマスパーティで

ガラスのコップにスパークリング~

シュワシュワしながら見た坊やの

美味しそうな笑顔

ママに捨てられた坊やのひとときの笑顔

それは十分 あたいの人生の

花むけとなりました



:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆



これはコッカラーノがスーパーで買い物をしている時に

たまたま特価の無果汁炭酸缶入り飲料を見かけて、

すべての物質とすべての生きとし生けるものの

アイデンティティとは・・・?と深く考え込んだ時に

書いた少し昔の作品でしたが、

このポエムを読んだ薔薇の大魔王は

「コッカラーノがワテのために悲しんで書いたポエム」

と思ったと聞いて・・・特にそういう事ではなかったので、

コッカラーノは大魔王に申し訳なくて、

それで本当に大魔王を主人公にしたポエムを書こうと思いました。

それがこれです。


:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆

【花影の君へ】


どうか駆け出さないで

その花影で じっとしていてね

大切な人だから



知らず知らず好きになり

切なくて揺れた

恋しくて泣いた


ひだまりに包まれる度に

優しい君の事 思い出すでしょう


風に吹かれて君は

僕の事など忘れてお行き



やがていつか時の彼方に

押しやられて消えて行くでしょう

二人で綴った 小さな物語さえも


:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆

これを読んだ人はきっと男性が恋した女性の事を想って書いた別れのポエムだと思う事でしょう。

誰もまさかこれが真っ黒な髭を蓄えた
熊さんのような薔薇の大魔王というオッサンに向けて書かれた作品だとはゆめゆめ思いますまい。

このポエムに隠されている二人にだけわかる
暗号のようなセンテンスがあります。

その一つは「花影の君」

つまりそれは薔薇の花の影にいて薔薇を育てている大魔王の事です。
二つ目は「風に吹かれて君は」
大魔王はウィンドウサーフィンに凝っていらしたので、
実際、風に吹かれていつも、色々な所へ行ってらした御様子でした。

最後の三行は
例の大魔王の所の掲示板でやらかしていた、
ご主人様と愛人ごっこの話です。

で、これは別れの詩です。

大魔王は、大変な愛妻家(と同時に恐妻家)
でいらっしゃいましたが、コッカラーノがその事に
気が付いたのは、ずっと後の事でした。
なんせ最初は高校生と思ってたくらいですから、
そういう細かい事情は何も知らなかったコッカラーノです。
深夜に大魔王から携帯に電話があり、
つい調子こいて長話していたら、
急に大魔王の声が途切れて「あれ?」と思った
次の瞬間、受話器から突然女の人の声がして、
「もしもし、こんな夜遅くに非常識じゃありませんか?」
と叱られたコッカラーノ。
その件に関しては、
次の日の昼間に大魔王からペコペコと平謝りのお電話も頂いた
コッカラーノ。
いつもコッカラーノを吾妻ひでお作『シャンキャット』に例えて、
だから萌えだったとかのよくわからない
小さな恋の物語もそろそろ幕引きの時が来たと
コッカラーノがハッキリと認識したのは、
大魔王が嬉しそうに早起きルンルンの朝のお散歩の様子を、
何枚かの写真入りで紹介していた記事の最後の写真を見た時でした。
野に咲くピンクの小さな可愛い花で作った花束を
奥さんの髪に挿してパチリと写した奥さんの後ろ姿。
よく撮れている綺麗な写真だと思いました。

コメント欄には
「いつまでもラブラブのご夫婦で微笑ましいわ」みたいな
コメントが沢山入ってました。

大魔王も奥様もさぞかしテレテレだった事でしょう。
コッカラーノはその写真を見て、
こんなオシドリ夫婦の仲に割り込んで行くほど
私は悪質でも悪趣味でもないと、
そう呟きました。
コッカラーノはその点については今もそう思っているのですが、
夫婦仲のいいご夫婦ならば不倫なんて、
例え心の上だけでもしてはいけないと思います。
大魔王はコッカラーノとヤフーのチャットをした時に、
その点を、こう説明されました。
「猿山の猿達だってそうだ!強いオスのボス猿は
メス猿を何匹も所有する事が許される」
コッカラーノは、その言葉に反論する気になれませんでしたが、
そんな説明で誰が納得するでしょうか?
私はメス猿じゃない。
そして猿山に所属した覚えもないと・・・。
だからコッカラーノは大魔王の掲示板に最後にこう書き残して去りました。
「いえでします。さがさないでね。17ごう」

それを見た大魔王はすぐに掲示板に
「家出猫探しています。ひらがなが書けます」と書いていましたが、

それを読むコッカラーノの胸の中には虚しさが大海原のように広がっていたのでした。
こうしてコッカラーノと大魔王の濃いネット恋(鰹風味)は、
夜に散りゆく薔薇の花びらのように終わりを告げたのでした。

ネット恋愛 コグリア国物語 第21話 Fカップの淑女

《文:シナモン》

 ヒナリーナというもう一つの人格がラクテーン地方に生まれたことで、コグレーンとコッカラーノは再び毎日のように交流するようになった。小説を休んでいる間、彼女はアフェリエーターとして知識の習得に努める一方、2チャンネルで知り合った彼とのメール交換に熱中していたのだ。

 二つのキャラクターを演じ分けるため、ヒナリーナはコッカラーノより若くてギャルっぽい性格に設定されていた。交流している層も微妙に違っていた。コッカラーノは男性のコアなファンが多くついているのに対して、ヒナリーナは『ねん猫ショップ』を運営していることもあって女性客が中心だった。
 ねん猫ショップを訪れるうち、コグレーンは、数名のヒナリーナの交流仲間と話をするようになった。その中の一人にスイートピーという女性がいた。

 スイートピーは、ブログで源氏物語を読み解き月に10冊以上の恋愛小説を読破する読者家で、楚々としたイメージを持つ反面、Female(女性)の頭文字Fのことを「私の胸のサイズといっしょだ」とのたまう天然かつ肉感的な側面も持っている女性だった。彼女はヒナリーナが不定期でつづっていた彼とのネット恋愛話に惹かれて『ねん猫ショップ』を訪問していた。なぜなら、スイートピーにはブログを通じた女性との交流に熱中している彼がいて、ヒナリーナに救済を求めていたからだ――ということを後にコグレーンはヒナリーナから聞くことになる。
 はじめはコグレーンと本の情報交換をしていたスイートピーは、やがて「男性の意見も伺いたいのです」と彼についての相談事をするようになった。

 「彼のことでとても傷ついているのです」
 コグレーンがめずらしく、恋愛に関するブログをアップした時のこと。スイートピーはコグレーンだけが見ることのできる形でメッセージを送ってきた。
 「不快なのなら彼の日記は読まなければ良いのでは」
 「公開している以上、どうしても気になってみてしまいます」
 それはそうかもしれない。スイートピーによると、彼はブログ上ではかなり八方美人に振る舞っているらしい。
 「一種のマスターベーションのようなものじゃないんですか? そんなことで傷ついてはつまらない」
 「もし相手がOKならお茶ぐらいする。コソコソするよりオープンにしていた方が『誠実』だと思うと言われました」
 この彼の言葉はコグレーンがきいても詭弁に思えた。しかし、これ以上深みにはまることを警戒したコグレーンは、極めて優等生的な言葉で受け流すことにした。
 「彼は『オレのことが信用できないのか』と言っているようですね。ブログの交流が物珍しく仕方ないのでしょう。温かい目で見ていてあげれば?」
 数日後、スイートピーから「しばらく構わないようにするつもり」というメッセージが届いた。

 スイートピーからの相談を受け流したコグレーンだったが、ヒナリーナはこれに倍してスイートピーから連日の相談攻勢があったようだ。
 「スイートピーさんからの相談でストレスを感じています」
 コグリア国で数日間スイートピーの姿を見かけなくなった頃、ヒナリーナがメッセージを送ってきた。
 「僕のところにも先週、相談がありました。マスターベーションのようなものじゃないのと答えたけど」
 「そうなんですか? 私はスイートピーさんへのお返事でハッキリと『彼氏は不誠実です』と書きました。その場しのぎの慰めではもう埒があかない段階に思えたので」
 きっぱりとしたヒナリーナの性格に、コグレーンは清々しささえ感じた。
 「でも、よかったです」
 「何が?」
 「もしかしたら、スイートピーさんの彼ってコグレーンさんかもしれないと思っていたから」

 _| ̄|○

 ヒナリーナがコグレーンをどのような見ていたかが垣間見えた気がした。


 <カレ>の登場で快復の一途と思われたRYOの病状は、一進一退という様相を呈しはじめた。半年以上かけて進むべき段階をわずか数週間で突っ走ってきた反動が彼女を苦しめているようだった。
 RYOは「死にたい」という言葉をよく使うようになった。でたらめにキーボードを叩いたような意味不明の文面がブログ上に踊ることもあった。
 そんな時、RYOを懸命に支えようとしたのがユキオという男性ブロガーだった。ユキオについては、前から彼女のブログのコメント欄で名前は見かけていた。コグレーンとも多少の交流があった。坊主頭で男気にあふれるタイプ――というのがブログを通じた彼の印象だった。RYOが危うい感じを隠さなくなってから、どちらかというと物静かでコメントも控えめだったユキオは、存在感を高めていった。コメント欄の二人のやり取りを読み、RYOの<カレ>がユキオだということがわかった。最初の<カレ>が実在していたかは不明だったが、少なくてもこの瞬間、二人はネットで出会い、恋に落ちていた。

 リアルの恋愛でもそうだと思うが、RYOとユキオがお互いの気持ちを装わなくなると、少しずつ地が現れるようになった。サーファーだったユキオは週末ごとにどこかの海に出かけていた。一日中パソコンの前で連絡を待っているRYOを顧みず、連絡が取れなくなることが続いた。そのたびにコグレーンは、「彼のことが信じられなくなりました。死にたいです」というRYOからのメールを受けることになった。
 自業自得とはいえ、コグレーンはこのやりとりに次第に消耗を感じはじめていった。

 一方、ヒナリーナの方でも、あまり有意義とはいえないネットライフを送っていた。スイートピーとのやり取りで消耗していることに加え、2チャンネルの彼は仕事が忙しくなり、なかなか連絡が取れなくなっていた。さらに、コッカラーノの部屋では、古くからのお友だち(薔薇の大魔王)とバトルを繰り広げていた。

 コグレーンとヒナリーナは夜ごとメールを交し合うようになった。少しずつ気心が知れた頃、コグレーンは「自分のことではないんだけど、ネット恋愛について相談したいことがあるんだ」と切り出し、RYOのことを打ち明けた。
 翌日、ヒナリーナから届いた言葉は容赦ないものだった。

 いま思えば、これが二人の垣根が崩れる転機となったのかもしれないけど。

ネット恋愛 コグリア国物語 第12話【コグレーンの竪琴】

《桃:文》

ところでネットからの恋愛というものを考えてみる時に、

出会い系からのネット恋愛と、それ以外のキッカケでのネット恋愛とが

決定的に違う事がある。

それは・・・出会い系を利用する人達が、自分の出会いたい相手を

年齢や居住地(場合によっては身長や体重、容姿の傾向も)などの条件で絞り込むのに対して、

それ以外のキッカケでのネット恋愛では、

そういった条件での絞り込みといった作業をいっさいしていない事。

何故そのような決定的な違いが出てくるのかと言うと、

出会い系を利用した出会いは予め出会い恋愛する事を想定・意識して行われる出会いであるのに対して、

それ以外でのネット恋愛は、そういった狙いを持たずに

偶発的に恋に落ちてしまうような夢見がちな人達が多いからだと思われます。

コッカラーノもまた恋をする時、相手との距離を気にした事は、ありませんでした。

故にいつもコッカラーノの相手となる人も、コッカラーノとの距離を

気にしていた試しがありません。

そういう事を気にするような人物であれば、最初から出会い系へ直行するのでしょう。

「さあ~するのだぞ」と想定して行われる出会い・恋愛とは合理的なものですね。

その方がより会いやすくて理想に近い条件の相手に引き合わされるので

便利でスピーディと言えば、そうなのでしょう。

けれど、どうも夢見がちなコッカラーノには、

そういう自分の条件によって絞り込んだ相手を

対象とする計画的な事が、とことん性分に合わないのでした。

もとよりネットでの出会いというものは人間の持つ五感〔聞く・見る・触る・味わう・匂う〕のすべてが閉鎖されている出会いです。

情報だけが頼りの世界で、その相手が発信する情報を、

おのが心で感じ取るという事が何より大切です。

恋愛に限らず、どのような人間関係であったとしても、

常々、人が発する情報を心の耳で聞き、心の目で見、

相手の気持ちを思い測るという作業を知らず知らずのうちにしています。

そんな日々の中で、自分が深くエンパシー(empathy)を感じた人は強く印象に残ってゆくけれど、

とりたてて特徴のない人は申し訳ないけれど、

旅する列車の車窓の外を流れる風景のように、どんどんと過ぎ去って

記憶から消えてゆくのでした。

誰も皆、他者から見た時に、数多くの人々の中の一人に過ぎません。

逆に言えば、ネットの上でコッカラーノと出会ったとしても、

コッカラーノが車窓の外を流れ去る風景である人々の方が、ほとんどすべてなのです。
ダッシュε=ε=ε=ε=ε=ε=ε=ε=ε=ε= (;´Д`)ノ~~ミナサマサヨウナラ(←皆様から見た流れ去るコッカラーノ)

だからこそ自分の感性の中に大きなエンパシー(empathy)を
残した人との関係性こそ最も大切にして行かねばならぬとコッカラーノは考えるのでした。

しかしながら五感を閉鎖して心のみで感じ取るエンパシー(empathy)は

限りなくテレパシー(telepathy)に近く、
そういった思念伝達は、巧みな文章によって成し遂げられる事が多いものですから

ネットの上では不特定多数の人が、その人物にエンパシー(empathy)を感じているものです。

それはずいぶんな競争率ではないでしょうか?

そのエンパシーとテレパシーがシンパシーを竪琴のように奏でているかのようなイメージで人気を博していた人、

それがコグリア国王コグレーンでした。


たまには原稿用紙に書いてみたが1日で挫折_| ̄|○ガク

しがない語り部に過ぎぬコッカラーノには、とても自分の書く拙い言葉が、

コグレーンの心に何らかの形で残存するとはゆめゆめ思えませんでした。

なにしろコグレーンはラクテーン地方では女性に人気爆発でしたから(笑)

ネット恋愛 コグリア国物語 第19話 パラレルワールド・ラブトーク

《文:シナモン》
 

ひょんなことから携帯メールのアドレスを交換したコグレーンとRYO/ナツコは、とても短いメールのやり取りを行うようになった。たとえばそれは、こんな風だった。

 「いま病院。怖い」
 「別に食われるわけじゃないし、大丈夫」

 「眠れないの」
 「横になってるだけでもからだは休まるから」

 指が太くて短いコグレーンは携帯メールが苦手だった。長いメールを携帯で打つことを考えるとめまいがするほどだった。23歳のナツコも若い割には携帯メールを使うことは少ないらしく、新聞の三行広告のような短いメッセージが毎日1度か2度交わされる淡い交流が続いていった。

 一方、ブログでのRYOは雄弁になった。いままで仄めかす程度だった病気のことをカミングアウトしたことで、吹っ切れたように自らのことを語るようになった。まるで、ジクソーパズルのピースを埋めていくかのように、RYOの交流仲間は彼女のことを知ることになった。

 少しして、彼女のブログの中に《カレ》が登場するようになった。

 『今ごろ会社かな。真剣な表情で仕事に打ち込んでいるカレ。ステキ』
 『カレのために病気を治して外に出られるようになりたい』
 『いまのわたしに必要なのは、純愛とほんの少しのエロス(*/∇\*)』

 彼女の中で《カレ》の存在は急速に大きくなっていったようだ。

 コグレーンはこうしたRYOの変化を好ましく思っていた。好きな人のために自分を変えようという気持ちをコグレーンはずいぶん昔に忘れてしまっていた。それだけに、RYOの態度は新鮮に映ったし、実を言うと素直でなくなった自分を反省したりもしたのだ。

 これだけではあまりにも綺麗事に聞こえるので、あえて告白するが、ほんの少し《カレ》のことが羨ましく思えたのも事実である。リアルワールドでは接点を持ちようがない女の子に対して、コグレーンは保護者のような気持ちでいたことは誓って嘘ではないが、《誰か知らないけどうまくやったな》という気持ちを完全に捨て去ることは難しかった。

 『ネットでしか知らない人。近くて遠い人。でも、わたしは必ずカレに逢いに行く』
 この気持ちでRYOの病状は、三歩進んで二歩下がるという緩やかなペースながら、ゆっくりゆっくり快方に向かっていったようだ。母親に付き添われて週に一回通院する以外、自分の部屋から一歩も外に出られなかったのが、自宅の居間で家族といっしょに食事を摂れるようになり、家族が留守の時は、宅配便の荷物を受け取れるようになった。愛犬に話しかけるのは別にして、家族でも母親としか話をすることができなかった彼女にしては、毎日大きな前進を続けていた。

 そしてある日の夕方。彼女はブログで報告した。

 『部屋を飛び出してしまった犬を追いかけて、家の外に出た。半年振りに夕日を見た。外に出た。出ることができた』

 この文章がアップする少し前、コグレーンはナツコから携帯にメールを受け取っていた。
 「外に出られました。犬の散歩ができたんです」

 コグレーンは次のようにメールを返した。
 「大きな一歩だね。でも、疲れすぎないように無理をしないで」
 言葉だけの関係で、誰かの力になれたと思えた瞬間だった。リアルワールドで汚れてしまった自分がほんの少しだけ浄化されたような気がした。

 コグレーンがRYOのブログの語り口に不思議な違和感を感じるようになったのもこの頃からだった。

 『外にでられたってカレに電話しました。とっても喜んでくれました。大きな一歩だと言ってくれました。でも、疲れすぎないよう無理をしないでと気遣ってもくれました。とってもやさしいカレ。大好き』

 《このメッセージ、どこかで見たような……》

 男が言いそうなことだから、偶然の一致だと思えた。

 この時は。

ネット恋愛 コグリア国物語 第26話【紆余曲折の秋】

《桃:文》

シャランラ、シャランラ、ヘイヘヘヘヘイ、シャランラ~
:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。
女の子だなんて思ったら大間違いよ~もう熟女~!


2ちゃんねるで知り合った若い子と
「えっ?マジ?」と半信半疑ながらもご機嫌でメール交換を
して「桃猫ちゃん」と可愛く呼ばれては浮かれ、
続いて電話などして声を確認し
年甲斐も無く(〃∇〃) てれってれ坊主になっていた頃は
まだ楽しくて良かったコッカラーノでしたが、
楽しい時というものは、そんなに長くは続きません。

水戸黄門が仰るように人生楽ありゃ苦もあるさ♪てなもんでして、
“彼氏、彼女の仲になれる”というような幻覚を見させる
きのこの魔法は時間の経過と共に薄らいでゆきました。

携帯電話のアドレスを教え合ってから以降は
パタッとパソコンメールは無くなりました。
とうとう拾い食いのツケが回ってきたようで、
携帯電話の回数は毎日から2~3日に1~5回→4~5日に1~2回
→1週間に1回となりました。

その頃、コッカラーノはアフィリを試験的に行う為に作った
『ひなちゃんのねん猫ショップ』というブログの日記欄で、
二人の事を飼い主と猫に例えて、
おセンチなポエムとも覚え書きとも惚気ともつかないような
手記を発表していました。

メールの言葉の調子や、たま~に電話で話した時の雰囲気からは、
なんらトキメク感情に変化は見られませんでしたが、
あまりにも連絡が途絶えがちになってくると
ヒナリーナ(元コッカラーノ)は
日記欄に
「ネットの上で起こった事は、きっとすべて束の間のかりそめ」
などと悲観的な言葉を綴るようになっていました。

それを見て「そうなのね!ネットの上で起こった事はすべてみんな幻なんだね!ありがとう!ヒナリーナちゃんの日記を読んで勇気が沸いて来ました」
と歓びのコメントを付けて飛び込んで来た人がいました。

スィートピーでした。
スィートピーは
彼が自分がやっているブログの常連の女性達とのふれあいに夢中になっている事で悩んでいる読書好きの若い女性でした。
ヒナリーナは自分の恋が行き詰まりを見せる事で
「勇気が沸く」という人がいる事に戸惑いを覚えると共になんともやるせない
気分になりました。

その後も度々スィートピーは彼の事で辛い胸の内を
ヒナリーナにメッセージで漏らすようになりましたが、
そういう時ヒナリーナは自分の恋の行方はさておきスィートピーの
悩みに誠実に答えようと努めました。
それでも時にはスィートピーの無神経さにムッとする時がありました。

そんなヒナリーナの消耗する気持ちを優しく受け止めてくれたのが、
同時期に、やはりスィートピーから彼の事で相談を受けていた
コグレーンでした。

コグレーンは、ヒナリーナのねん猫ショップがオープンして間無しに、
すぐに毎日のようにヒナリーナが日記を更新する度にやってきて、
単なる惚気のようでヒナリーナ本人が恐縮するような日記にも、
誠実で気持ちの和むコメントを付けてくれていたのでした。

さて10月頃には一度、
東京から福岡へ引っ越す事になったお兄さん(彼が自分の事をそう言うので)は
「神戸を通過する時に一度神戸で降りるから、その時に会おう」
と言いましたが、
結局、その引っ越しは、もやしのように細っこいお兄さんの
持てる体力のすべてを投入されてバタバタと敢行されたらしく
体力が余らなかったお兄さんは
「本当にごめん!!やっぱり無理」と言って
神戸をすみやかに通過してゆきました (;´Д`)ナンデ~?

ネット恋愛 コグリア国物語 第13話【コグ連非加盟】

《文:シナモン》

 2005年の夏頃から、コグレーンは少しずつ領土の拡大を図り始めた。
 コグレーンが好む白い花は、リアルワールドでも咲かせることは可能だったが、コグリア国で咲かせた花はいつまでも瑞々しさを保つことが分かった。
 リアルワールドでは思うように届けられない言霊も、この王国では存分に力を与えることができた。少なくても、この頃はそう思われた。

 ただ…若干の誤算もないわけではなかった。
 リアルワールドにおけるコグレーンの大切な習慣の一つは、病院で奉仕活動をすることだった。身内の病気をきっかけに週に1、2度終末期医療の現場でボランティアをしていた。その記録を残すのは、コグリア国の運営でかなり優先順位が高いものだった。
 ほとんど自分のための記録として奉仕活動の日記をつけていたが、ふと気がつくと、コグリア国の同盟国(リンク友と呼ばれていた)には、同じ病気で近親者を看取った経験のある人々が集まるようになっていた。その中には、リアルワールドでコグレーンが関わった方の関係者も含まれていた。
 それを知ったコグレーンは、言葉の取扱いに細心の注意を払わなくてはならなくなった。
 リアルワールドの人間関係に気を使いながらブログを運営することについて、当初は窮屈な思いをすることもあったが、順応性だけは高いコグレーンは、徐々にこのスタイルをモノにしていった。できあがったのはふわふわして甘い言霊の世界。そこで描かれている世界には嘘や誇張はなかったが、《100人読者がいれば、100人のうち1人も不愉快な思いをさせない》ことをめざして書かれた言霊には、批判精神というものが欠如していたことは否めない。たとえば薔薇の花を飾るときも、棘を一本残らず取り払ってから飾ることが暗黙のルールとなった。

 そのおかげで、ひと頃、「神様を信じますか」系のブロガーになつかれて苦労したこともあった。
 そこで収穫された果実には、イーヒト菌と呼ばれる成分がたっぷり詰まっていた。一口食べれば少しの間甘い気持ちを共有できた。食べ過ぎるとどうなるかは…知らない。
 コグリア国の同盟国はまた、同盟国間の交流も活発だった。それはいつしか「コグ連」という一大連合体へと進化していった。その中で、コグ連から距離を保っていたコッカラーノは、コグリア国を訪れる人々の中では独特の存在になっていった。

ネット恋愛 コグリア国物語 第20話 妙な味の女

《文:シナモン》

 RYOの<カレ>は実在するのか?
 コグレーンが携帯メールでRYOにメッセージを送った翌日、彼女の日記には「昨日カレから電話がありました」で始まることが多かった。日記の中の<カレ>の言葉は、コグレーンがメールで送った文面と奇妙に一致していた。「電話がありました」を「メールがありました」に置き換えれば、ほぼコグレーンのメッセージと重なる内容と言えた。
 自分に向けられた言葉を拾い集めて、自分の頭の中にやさしい<カレ>を作り上げた哀しい女の子の姿をコグレーンは思い浮かべた。
 《一時の同情心に流されてブログ以外の交流を始めるべきではなかったのかも知れない》
 コグレーンは、自分のそんな思いが自意識過剰であることを願った。たまたまコグレーンと同じような言葉をかける<カレ>がRYOのパソコンの向こう側に実在していればいいと思った。

 2005年の夏―――コグリア国を建国して3カ月で同盟国は50を超えた。この頃、奇妙な雰囲気を持った女性が時々コグリア国を訪れるようになった。
 <ヒナリーナ>と名乗る女性は、前置きなしで、まるで旧知の友であるかのようにコグレーンに語りかけてきた。
 頭に?マークをつけながら、コグレーンはヒナリーナが残した足跡を頼りに彼女の元を訪れた。

 ヒナリーナは『ねん猫ショップ』というアフェリエイトを運営していた。まだ開店して日が浅いらしく、店にはあまり商品が並んでいなかった。商品がまったく並ばない日もあって、そんな時は、代わりに奇妙な味の文章が飾られていた。ネットで知り合った彼氏とのことを猫と飼い主にたとえたエッセーのような散文は、子どもの頃通った駄菓子屋のような懐かしい感じがした。
 プロフィールには、『病弱で外に働きに出られないけど、アフェリエーターとしてがんばるのでよろしくね』と書かれていた。住んでるところは大阪。やはり知らない人だ。しかし、ヒナリーナのブログはコグレーンの深層心理を微妙に刺激した。秋の気配を感じて「そうだ、京都いこう」と思い立つように、コグレーンはヒナリーナの文章に触れて「そうだ、たまにはコッカラーノの部屋をのぞいてみよう」と思った。

 コッカラーノの部屋はまだ空き家になったままだった。せっかく来たのだから――と書置きを残した。高原のペンションに置かれている『思いでノート』に「ミドリ、愛してる」と書くような気分で、「コグレーン参上 たまには空気を入れ替えないとカビがはえますよ」とコメント欄に書きなぐり、♪パラリラパラリラと立ち去っていった。

 そんなことをやっている一方、RYOとどのように交流していくか、コグレーンは数日間考えていた。コグレーンはそんなにストイックな性格ではなかったが、自分の中で許していないルールがあった。「相談に乗るよ~」と近づいていって、弱っている相手の心につけこんで女性をモノにする行為を軽蔑していた。高校のとき、まさしくこの手法で当時つきあっていた彼女を他の男に取られて以来、相談を受けている女性は恋愛対象から外すことを自分に課していた。
 かといって、自分の勘違いかもしれない理由で、一方的に交流を絶つこともできなかった。そこで、とりあえず《お兄さん》に徹することにした。

 「君のことは妹みたいに思ってる。これからはRYOちゃんと呼んでいい? カレと早く会えるよう応援するよ」と書き送った。

 病院と犬の散歩以外はほとんどパソコンの前にいるらしいRYOは、即レスが常だったが、この時は返事がくるまで丸一日かかった。
 「いいですよ。本当の兄とは仲良くないけど、新しいお兄ちゃんができて嬉しいです」

 コグレーンはほっとして、自分の王国で、活けた花たちの飾りつけに取りかかった。気がつくと一通のメッセージがメールボックスに入っていた。
 コッカラーノからだった。件名は「気をつかってもらってかたじけない」
 スクロールして、本文を読んだ。

 「ヒナリーナはわたしです」

 は?

ネット恋愛 コグリア国物語 第10話【あだ花】

《桃:文》

2ちゃんねるという暗黒世界の文化人類学(今は地理学・人類学という呼び方に変わったようです)というもっともらしい扉を開けると、

そこは雑言罵詈讒謗の広大な森。

華やかなようで湿度の高い世界。そんな森の片隅に、

ゆらゆら~と舞い落ちるはキノコの胞子か・・・?

揺らめきながら誰も訪ねた事のない未踏のマイナースレに

着地した幾つかの胞子達。

皆、こぞって名前は無し。

そんな光の届かない場所でも育み生まれいずるモノはあるのか?

やってみなければわからない。

「行ってみよう!やってみよう!」となっちゃんも言っている。

(出典:NHK教育TV)

胞子達のうちの一つが猫顔の首元の猫毛のあたりに着地しました。

猫顔とはすなわちコッカラーノの事。

第9話で御紹介した「猫顔フェチの方おられませんか?
」の中で、

その一つのコッカラーノの首元の猫毛に付着した胞子は、

その後もコッカラーノの気持ちをくすぐったくしながら、
メールへとコミュニケーションの基盤を移動させました。



今、思えば猫毛に付着するなどとは・・・余程ぬくもりに飢えていたのでしょう。

それはきのこ?そう幻覚を見させるきのこであった疑いが濃厚です。

“彼氏、彼女の仲になれる”というような幻覚です。

けれど、それは今だからこそ冷静に判断出来る事。


どうして人は孤独な時に温かな幻想に溺れようとするのでしょうか?

それはマッチ売りの少女がマッチを1本擦るごとに見た幻覚にも似ています。


人は時々ネットの上で幻覚を見せるきのこを拾い食いするものなのですね。

そして咲くは大輪のあだ花・・・愛と言うには遠いけれど

何故だかどんどんとこの二人はトランス状態に陥って行きました。



メール交換が始まってすぐにコッカラーノは自分の語り部の小屋の住所を

教えましたので、彼はコッカラーノの小屋を訪ねて、

コッカラーノのプロフの写真を見ました。

それなので自分も写真を送らなければ悪いと思ったのでしょうか?

ほどなくしてメールに添付して送って来た彼の写真は

ヒョロ~として痩せた若い二十歳を幾つも過ぎていない風な青年でした。



彼は当初メールでは、自分の事を「お兄さん」と表現していました。

お兄さんの思い描いたイメージは自分の心の領域に迷い込んだノラ猫を

「桃猫ちゃん」と呼び可愛がっているという様子でした。


しかし、桃猫ちゃんは聞いてビックリ!お兄さんは18歳も年下でした。
正直言えばコッカラーノは年下は苦手でしたが、

お兄さんが、なかなか頭の良い人であったので、

それほどジェネレーションギャップを感じる事もなく読書

(と言っても、ほとんど漫画)や恋愛論などで話は大変盛り上がり。

一時期は勢いづいて1日にお互い長いメールを3~4通ずつも

送り合うようになった事もありました。


「気が合うか?合わないか?」と言えば間違いなく気があった方でしょうが、

やがてお兄さんの口癖『トップオブプライオリティは勉強だから』の名の元に

この後、二人の間は知らず知らず斜陽に向かい始めます。

ネット恋愛 コグリア国物語〔白い花の王宮と魔女〕第3話 愛人17号

《文:桃》

関西出身であったコッカラーノは、根っからお笑いが好きでした。
テレビでお笑い番組もよく視ていたし、吉本新喜劇を視て育ったので、
お笑いの基本は、まずまず脳内に培われてありました。
調子の良い時には、今は亡き横山やっさんの霊を肩車しながら生きている
コッカラーノにとって、関西風の冗談の通じる人はリラックス出来る
故郷のような癒し効果をもたらしました。

ラクテーン地方で、コッカラーノに関西風お笑いの風を吹かせて下さったのが、
薔薇の大魔王でした。
薔薇の大魔王は薔薇を丹精込めて育てている心の優しい人でしたが、
ネットの上で優しい人と思われたいという欲が微塵も無い
大魔王は、時々は誰かと喧嘩をしながら、
天真爛漫に薔薇のハウスを開店しておられました。
クリスチャンディオールやエルメスなどと名付けられた薔薇達は皆、
すべて薔薇の大魔王の愛情の成果として
大輪の花をシーズンごとに咲かせていました。

コッカラーノが初めて薔薇の大魔王の薔薇ハウスを訪れた時、
その玄関先で目にしたものは、
何かのアニメ(今時風)の女の子の二つの画像で、
それぞれの下に「愛人1号」「愛人2号」という冗談が書かれてありました。
如何にも今時風のアニメだったのでコッカラーノは、
高校生の男の子なのかなと思っていました。
『それにしても高校生やのに、もう既に「愛人」を2人も持つドリームを
持つとは、オモロイやっちゃ!なかなかエエ根性してる」
と感じたコッカラーノは、掲示板にこう話しかけたのでした。

「愛人が二人もいるとは羨ましいですね。一人私にくれませんか?」

するとかえってきたレスはこうでした。
「2人どころかもっとおる。愛人を譲る事はでけへんけど、今、愛人17号が欠員になっているから愛人17号にしたってもええよ」

そんな事からコッカラーノは薔薇の大魔王に17号と呼ばれるようになり、
薔薇ハウスでは魔王が住む家のバスルームを
自分の部屋にあてがわれたのでした。

ネット恋愛 コグリア国物語 第1部 コッカラーノ編 第9話  2チャンネルの渚の休日

《文:桃》

「恋愛におけるツカミは外見」という恋愛哲学を実践すべく、
自分の外見を看板にして、2ちゃんねるに板を作り、その種のマニアを集めて、
仕掛け網にする・・・
そんな馬鹿馬鹿しい作戦を実行したバカ女が昔、実在しました。

その名はコッカラーノ。
コグリア国物語の主役コグリア国王の相手役です。

「猫顔マニアの方おられませんか?」そんなタイトルの掲示板を作り、
そこで話された話題は、コッカラーノの思惑とは大きくそれて、
アイドルで猫顔なのは誰か?という事ばかりでした。
それに、集まった年齢層も、おそらく10代中心だったかな?

今、思い返せば・・・結果的には掲示板を作った者の思惑は、
どっかへふっとんで、
アイドルで猫顔なのは誰か?という事が、
語られ続けたとしても、
2ちゃんねるという場所は現実にはユーザー同士が、
まったりと、お喋りを楽しむ場所のですから、
そういう使われ方こそが、本来通りの2ちゃんねる掲示板の趣旨にあった
正しい使われ方だったと思います。
吐き違えておったのはコッカラーノの方でした。

ただ「2ちゃんねるを恋人ホイホイにしよう」だなんて、
冷静に考えてみれば、そんなゲスな思惑がうまくいくわけもないですし、
これはコッカラーノの恋愛汚点と言えますので
第9章「2チャンネルの渚の休日」はコッカラーノ自身の意思によって、
この小説から抹消されました。

恋愛にはマーケティング能力も必要かもしれませんが、
やはりマーケティングを行う場所柄というものは慎重に選ばねばいけない。
今更ですが、
コッカラーノは反省の意を込めて、そう語っておりました事を皆様にお伝えしておきます。
プロフィール

桃

Author:桃
文学と映画の好きな主婦。
神戸に住んでいます。

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