FC2ブログ

ネット恋愛 コグリア国物語 第33話【名古屋の夜】コグレーンの目線から

《文:シナモン》


 一日早く名古屋に着いていたコグレーンは、夜の接待で名古屋の繁華街、錦に繰り出した。接待の相手はイケメン30代のIT企業の社長。夜の街に精通しているこの社長にコグレーンは「この辺でいい店知りませんか?」とさりげなく情報収集を試みた。ところが、イケメン社長の口から出てくるのはクラブ系の店ばかり。
「たとえば女性と二人だったらどんなところに行くんですか?」
 コグレーンの誘い水にイケメン社長の目がキラッと光った。
「おや、名古屋にそんな女性がいるとは初耳でした」
 《そんな女性》になるかどうかは明日にかかっている。「彼女のタイプは?」と追求されても、まだ逢ったことのない女性。口ごもっているコグレーンに武士の情けをかけてくれたイケメン社長は「この辺りなら外れの店はあまりないと思いますよ」と通りの名前を教えてくれた。コグレーンはそこから近い交差点でタクシーを降り、イケメン社長は再び夜の街に消えていった。
 広い通りを探索していると《京町風和食の店》という看板が目に止まった。ヒナリーナが和食党だということは、メールのやり取りで知っていた。《名古屋で京都風かあ》とも思ったが、関西出身の彼女の口にはきっと合うだろうと思い、店の電話番号を控えた。『恋のしずく』という店の名前も、これから始まる(かも知れない)出会いにはふさわしいような気がした。そのまま地下鉄2駅分を店を探しながら歩いた。携帯電話のアドレス帳には4、5件の店の情報をインプットした。

 デートの下調べをするなんて随分久しぶりのことだった。高校生に戻った気分だったが、それはそれで悪くはなかった。

金の時計

 金の時計前で彼女と待ち合わせた。「逢おう」と言ってから、実際に逢うまで少し時間がかかった。僕以上に彼女が緊張していることが伝わってきた。直前のメールでヒナリーナは「無人島であなたに置き去りにされる夢をみました」と送ってきた。
「夢の中のあなたは別人のように冷たかった。私は『付き合ってくれなくてもいいから、帰り道を教えて』と泣き叫んだが、あなたは黙って立ち去ってしまった」
「そんなことするもんか」
「いいの。もしあなたが私のことを気に入らなくても。その時はブログを閉鎖して姿を消しますから」

 前日の夜の高校生のような気分を大切にしよう――と逢う前から決めていた。人混みの中で初めて顔を合わせた時、「手をつなごう」という言葉が自然に口から出た。彼女は写真の通りの女性だった。一度ホテルに寄って荷物を置いてから食事に出かけることにした。
「和食がいいと思って、店を探してあるんだけど……」
 彼女に異存はなく、タクシーで昨夜歩いた通りまで出かけた。店の暖簾をくぐると、そこは個室の店だった。しかも、一部屋ごとに離れになっていて、完全に密閉された空間になっている。

 こ、これは……気まずい。でも、ちょっとラッキーかも。

 彼女はほとんど酒を呑まず、二人とも注文した料理が腹に収まらない。ポツリポツリと世間話をするが、だんだん口数が少なくなっていく。それでもコグレーンにとって、この沈黙は苦痛ではなかった。彼女も寛いでいるように思えた。狭い個室と薄暗い照明で、いつもより大胆な気持ちになってきた。
 肩を抱く。彼女が躰を預けてきた。長い髪を撫でると目をつむった。最初は耳に、続いて唇にキスをした。軽いキスを何度もした。
 胸の谷間が目の前にあった。何かが止まっている。ブローチかと思ったら安全ピンだった。
「なんでこんなの着けてるの?」
「初めてだから少し隠しとこうと思って……」
「そういう服なんだから、隠すこともないんじゃない?」
 安全ピンを取ると谷間が大きく開いた。
「ちょっとだけ、失礼」と言って、ちょっとだけタッチさせてもらった。“高校生モード”だったのは結局、正味1時間ほどに過ぎなかった。

 これ以上はさすがに憚られ、店で出て名古屋の繁華街を歩いた。歩き疲れるとタクシーでホテルに帰った。

 逢っていきなりエッチするなんて軽すぎる――という点では二人の意見は一致していた。でも、肌を触れ合ったことでコグレーンは昂ぶっていた。
「約束は守る。でも、もうちょっとだけいっしょにいないか?」
 食事してすぐ別れてしまうのが惜しかった。彼女の部屋に入った。予約したホテルは、コグレーンが昔、花屋だった時に勤めていたチェーンだった。シティホテルとは名ばかりの狭いシングルルームのベッドに二人で横たわった。《気を使っている》というだけあってヒナリーナはきめ細かいきれいな肌をしていた。「服がしわになるから」と言って、ピンクのニットとデニム地のスカートを脱いでもらった。
「締め付けるパンツをはいてるから脱いでいい?」
 ヒナリーナが言った。もちろん異存はなかった。シーツにもぐったまま、ゴソゴソと動作をする。コグレーンもベルトを外し、スーツのズボンを脱いだ。肌が密着する感覚が心地よかった。体温が直に伝わってきた。
「この際だから、これも取っちゃえば?」
 何が《この際》かは不明だが、コグレーンはヒナリーナの背中に手を回し、ブラジャーのホックを外した。部屋の照明を落とし、二人とも着ているものをすべて取り去った。そのまま長い時間、コグレーンは指でヒナリーナの躰を探索したが、最後の一線だけは越すまいと耐えた。約束を破って軽蔑されたくなかったから。

 明け方近くになって、コグレーンは自分の部屋に戻り、ほんのわずか仮眠を取った。

(続く)
 


 記憶を辿りながら、シナモンの視点からできる限り率直につづってみました。次回は同じ状況を桃さんの視点からつづってくれる予定。僕にとってもついに明かされる真実……かも。

つづく
第34話へ

*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆';*。:*.☆。o:☆'

お忙しいところ恐れ入ります。
もし万一、この作品で楽しめましたら1クリックを!m(u_u)m

コメント

非公開コメント

1 ■お~♪

これはもう…観客としては、お二人それぞれの心理描写を期待しますね♪
個人的には、つい何ヵ月か前の自分と恐ろしいくらい設定が似てるので、みょ~な気分です(*^o^*)

3 ■わおぉ~。

なんか 展開早過ぎ。。。

いや、他人のことは言われへんけど・・・苦笑。

5 ■ryouさんズルイ~~~~!

これと良く似た事があったんなら、
なんで書いてくれないの?
ああ・・・でも相手の人の了解が取れないと書けないって事もあるよねぇ(*^-^*)ゞ
了解取れたら是非とも書いて下さいね!

6 ■寝太郎さんへ

でもね・・・もう一年も前の事だからよく覚えていない事も多くって、
何でも経験したらすぐにでもメモっておかないと後になって困りますね~(;^_^A アセアセ
プロフィール

桃

Author:桃
文学と映画の好きな主婦。
神戸に住んでいます。

最新記事
カテゴリ
最新コメント
過去のログ v.コンパクト
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR